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酒場 2
応援にやって来た部下の兵士に、ツルハシの出どころを調べるように指示したクレイグは、ツルハシの持ち主を探すために、周囲での聞き込みを始めた。するとすぐに、ツルハシを置いて行った男が細い通りの方へ入って行ったことが分かった。
「治安のよく無い方……だな」
そこへ辿り着くまでに、持ち主がいてくれると良いな。
そんな事を思いながら、クレイグは部下の一人を連れて細い通りへと入った。
通りでは騒ぎが起きていた。
一軒の店の前で人だかりができていたのだ。
「おい、何事だ?」
人だかりの一番後ろに声をかけると、非常にかったるそうにその若者は振り返った。
そして、立っているのが衛兵団の人間だと知っても態度を変える事は無かった。
寧ろその表情には嫌悪すら見て取れた。
「もう一度聞くが、何事だ?」
「自分で見ろよ」
「何だその口の効き方は!!」
憤る部下をクレイグは手で制した。
ここで暴力沙汰にでもなれば、周囲は間違いなく男の味方をするだろう。
不利なのは二人しかいないクレイグ達だ。
「分かった」
男にそれだけ言い、クレイグは人混みをかき分けて進む。人混みを作る人々も、決して協力的では無かった。
「良いのですか、クレイグさん」
怒りのおさまらない部下がそう尋ねた。
「袋叩きに会うよりマシだろう」
クレイグがそう言うと、部下は収まりがつかないなりに理解したらしく、荒々しい息を一つ吐いてそれ以上何も言わなかった。
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