逃避

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「おはようございます。本日は2月1日、もうすぐ節分がやってきます。外出時は一人での行動を避け、鬼人を見かけた方は、鬼人特殊対策局“CDS(シーディーエス)”へ通報をしましょう。それでは、皆さん本日も安全で健康な1日をお過ごしください。」 「…朝はいつも同じだな。」 風魔 赤也(ふうま あかや)は、朝のニュースを見ながら朝食のパンをかじる。 リュックを背負い、ダイニングテーブルに置かれた両親が写った写真に「行ってきます」とつげた。 「あ…忘れてた」 玄関の戸を開ける前に思い出したかのように、コートのポケットに入れてある薬を取り出し、口に含む。 ゴクリと飲んでから、改めて「行ってきます」と言うとゆっくりと扉を開けた。 道路は少し凍っていた。 昨日降った雨のせいだ。 凍った水たまりを飛び越え、学校へ向かう。 ふと、昔の自分を思い出していた。 昔は、薬を飲むと手足が重く、だるくなって普通に歩くこともできなかった。こんな道が凍る季節にはよく転んでいた。 今も身体の重さは感じるが、昔と比べればかなり自由に身体を動かせるように なった。 なんでこんなことを思い出すのだろう…。 あぁたぶんもうすぐ節分だからだ。 今年は父がいない。 やることはわかっている。頼るべき人も知っている。 だけど…。 …考えるのはやめにしよう、 少なくとも今日は何も起きないのだから。 そう自分に言い聞かせ、学校への歩みを早めた。
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