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赤鍋
「辛ぇぇ。やっぱり唐辛子入れすぎとちゃう?」
「こんくらい辛い方が食欲も進むってもんよ。最近はアイスばっか食べてこないだのポトフもあんまり食べてくれなかったじゃない。自信作だったのよ。」
「それはすまんって。どうも暑くてのう。」
同棲して2週間。晩飯は交互に作るとルールを決めたが、このところ夏希の仕事が忙しかったため、しばらく壮太の担当であった。壮太の料理はというと、チャーハンにうどん、そうめんといった簡単なものに足りなかったらデザートにアイスを食べてお腹を膨らませるといったものであった。暑さに加え、せっかく同棲を始めたのに二人で過ごす時間が短いことが壮太の意欲を削いでいた。この日は久しぶりに夏希の仕事に型がつき、たまには栄養のあるものをということで二人で赤鍋を作ったのであった。
「それにしても汗っかきねぇ。」
「辛すぎるんだよ、これは。アイスで口直ししないと。」
そう言って立ち上がろうとする壮太の裾を夏希は引っ張る。
「まだ全然食べてないじゃない。ほれほれ、ふぅふぅ、あーん。」
「あーん。うまい。」
今度は嬉しそうに壮太が箸を持ち上げる。
「ほらなっちゃんも。あーん。」
「あーん。うん美味しい。」
そこには汗だくで、心の芯まで火照った二人の姿があった。
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