第3話
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第3話

 最近弟の様子がおかしい。  どうおかしいって、それは……。 「なあ、有原。人を噛んだり吸ったり、したことある?」  週五日、アルバイトとして勤めている料理店のバックヤード。同じ大学に通っていることもあり、シフトがよく重なる有原との休憩中、最近頭の中を占めている疑問の断片がぽろりと口を衝いた。  ……舐めたり、はなんとなく省いてしまった。 「……あ?」  有原の箸から、鶏のから揚げがぼとっと落ちて皿を転がる。 「真琴からそういう際どいネタ振ってくるとか、いったい何事だ? まさか彼女でもできた?」  半分困惑。半分からかいの笑みを浮かべる有原に、俺は箸を持った手をブンブンと顔の前で振った。 「いや、違うから。そういう方向のじゃなくて」 「そういうのじゃないって……エロ系じゃなく噛んだり吸ったりって普通にやべぇヤツだろ」  それか吸血鬼的な? と笑って、有原は今度こそから揚げを口に運んだ。 「そうか……そうなんだよなぁ……」  普通は人は人を噛まない。吸わないし、舐めない。 「まあ、ストローとか爪とかなら、噛んでるヤツたまに見かけるし、噛み癖ってのはあるよな」  黙り込んだ俺に、鶏肉を飲み込んだ有原がフォローしてくれる。基本的に優しい男だ。
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