第2話
1/4

第2話

 月曜日。学生や会社員は憂鬱なこの曜日が俺は好きだ。兄である真琴の、バイト先の店休日である。俺が部活から帰宅して玄関を開けると、いい匂いが漂ってきて、真琴がとびきりの笑顔で出迎える。真琴の「おかえり」の言葉に俺はそっけなく返事をする。そんな態度になるのは許して欲しい、だって思春期だから。もともと愛想がある方でもないけど。  二年ほど前に母が再婚し、このマンションで兄との二人暮らしが始まった。男二人じゃ炊事洗濯に四苦八苦しそうなものだけど、ウチの場合はずっと母子家庭で幼少期から真琴が家事を担っていたからなんの問題もない。大変なのはこの年で急に稼ぎ頭から専業主婦にジョブチェンジした母親の方だ。  しかしこの日は玄関を開けても真琴は顔を見せなかった。いい匂いはいつも通りするんだけど。これは多分ビーフシチュー。それに混じって甘い匂いもする。真琴は忙しくても料理の手を抜かないけど、バイトのない日はことさら気合いを入れる。これがガチでウマい。外食や他人の料理では到底満足できなくなるくらい。 「真琴?」  そう広くはない部屋だ。玄関から二、三歩も進めばリビングダイニング。しかし真琴の姿は見えなかった。もしやと思いソファの背もたれの向こうを覗き込むとエプロンをつけたままの兄が寝息を立てていた。調理を終え、俺を待っている間に寝落ちしたようだ。 「おい、真琴」  呼びかけるが起きる気配を見せない。無理もないと思った。真琴は普段そういう態度をまったく見せないけど、大学にバイト、そこに家事のすべてを押し付けている状況だ。疲れているに決まっている。