先輩、好きです。

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先輩、好きです。

この声と顔は間違いない。やっぱり俺は一度彼を見ている。午後の部活説明会の時、ステージ上で話していた生徒会会長だ。 泉名先輩を知らない生徒はこの学校にはいないらしい。文武両道、品行方正の優等生。 けど、腐男子。紅本先輩と同じくBLが好きとは、人は見た目で判断できない。 「……なるほど、話はわかった。大丈夫、未早君も今日からウチの一員だよ」 「やったー! ありがとうございます。これで俺も紅本先輩のお役に立てます!」 「君は紅のこと尊敬してんだね。中学の時の先輩なんだっけ?」 「はい。紅本先輩がいたから、俺は中学で部活を続けられました。でも今は、研究会も両立したいと思います。頑張るのでよろしくお願いします!」 大声で一礼すると、泉名先輩も明野先輩も笑顔で拍手してくれた。 「うん、仲間が増えるのは良いことだね。語れるし、情報交換できるし。あ、18禁は暗黙の了解で一年生も読めるよ」 「だめだめ、未早にはまだ早いから!」 泉名先輩はかなり際どい表紙の漫画をいくつか出してきたけど、全部紅本先輩が没収してしまった。 「何も知らない状態でいきなりマニアックなもん見せたら刺激が強すぎだろ。未早にはもっとフワフワした描写のやつから始めてほしいんだ」 「さすが紅~、純愛至上主義。でも俺はもっと刺激的なのもオススメだよ? 禁断関係とか禁断関係とか近親相姦とか」 「泉名はマジで性癖隠せ。とりあえず、今日はこの辺でお開き。……未早、久しぶりだし一緒に帰ろう」 先輩は俺の手を引いて、ドアの方へ向かった。今日一日お世話になったので挨拶をしようと振り返る。 泉名会長は笑顔で手を振ってくれた。 「二人とも、また明日」 「あっはい、お疲れ様です!」 部屋を出てからどんどん前を歩く紅本先輩についていくのが大変だった。 「 紅本先輩、ちょっと歩くの早くないですかっ?」 「え? あぁ、悪い。つい、な……」 先輩は校門を出てから立ち止まって、複雑な顔で俯く。 「まだ頭ん中グチャグチャでさ。お前に会えたことも、腐男子なのバレた事も。何か夢みたい。ははっ、変だな」 それはわかる。 立場は違うけど、先輩が混乱する理由は理解してるつもりだ。 「だけどさ……」 それでも、紅本先輩は強い人だから。俺の心配はいらないと思う。 「また、未早となにかやれるって思うと嬉しいよ。今からすごい楽しみで、ワクワクする」
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