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①秘密があります
一人一人。持って生まれた個性がある。それを長所とするか短所とするかは、他の誰でもない自分自身なのだ。
「目を覚まして下さいよ!大狼さんっ……!」
「……はあ。すげえ、いい匂い。興奮する」
「や、めっ……っ……」
━━━私が絶体絶命のピンチに陥ったのは、働き始めて一週間になる『オールサポートおおがみ』という、いわゆる街の何でも屋さん。
その事務所内にある休憩室での事だった。
この日、新人である私が始業前清掃の為に30分程早く出勤すると、事務所内の様子がいつもと違っていた。
開け放たれたままの窓、食べ掛けのカップラーメン、つけっ放しのテレビからは今日の運勢ランキングとやらが流れていた。
来客用のソファーに脱ぎ捨てられたジャケット、給湯室前の通路にはシャツ、革靴、ズボンが道しるべの様に続く。
それらを一つずつ拾い集めながら辿り着いた先は、僅かに扉が開いた状態の休憩室。
そっと中を覗き込むと、室内ギリギリの幅に設置された簡易用のベッドがゴールです、と言わんばかりに動線上に靴下が二枚並んであるのがわかった。
うちでこんなだらしの無い事をするのは。
「っ……」
「……んんっ」
『オールサポートおおがみ』代表、大狼智也彼しかいない。
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