抜け道

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 リオンの母親は、今日は仕事に出掛けなければならないので、朝食をとると慌てて2階の抜け道から自宅に戻り仕事に出掛けた。 リオンはもう一日会社がお休みなので、カイトと朝食のテーブルについたままお茶を飲みながら昔話に花を咲かせていた。 すると突然、 「リオンは彼氏とかはいないのか?」 「えー?残念だけど、まだいないの。」 「そうなのか、まだ若いからそうあせることもないさ。 こればっかりはご(えん)のものだからな。」 「お父さんとお母さんがであったのも、お父さんが32歳の時だし…。お母さんも25歳だったっけ。」 「ねえ、お父さんとお母さんってどうやって出会ったの?」 「それがおかしいんだよ。私が休みの日にバス停でバスを待ってたら、お母さんが声をかけてきたんだよ。 ナンパかと思ったら、友達に紹介されて待ち合わせをしていた人がお父さんだと思ったそうだ。その人は来なかったんだけどね。」 「とてもお母さんががっかりしていたものだから、なんだか可愛そうになってね。 お父さんはその時暇だったから、良かったら一緒に遊園地でも行きませんかって誘ったら、くるって言うんだよ。」 「はじめてあった私についてくるなんて大丈夫かと思ってたけど、後でお母さんに聞いたらお父さんのこと絶対に悪い人には見えなかったんだって。」 「そうなんだ。その後どうなったの?」 「遊園地でソフトクリーム一緒に食べたんだけど、おいしいおいしいってペロリと食べたんだよ。 それがとってもかわいくてね。 また会ってもらえますか?って聞いたら、わからないっていうんだよ。 だから私の会社の電話番号を教えて、誰にでもついていったらダメですよってしっかり注意しておいたんだ。」 「それで?」 「そしたら、1週間位してお母さんから電話があって、それから付き合うようになったんだよ。」 カイトはありきたりな出会いでリオンががっかりしただろうと思った。 「なんだか嬉しい。私、この間お母さんからお父さんがプロポーズした時のこと聞いちゃったわ。」 カイトは照れて頭をポリポリかいていた。
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