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抜け道
母親とリオンは父親につれられて、父親の住んでいる村へやって来た。
「ここが私の家だよ。」
丸木小屋が目の前にあった。
「さあどうぞ。」
父親がドアを開け、自分が先頭になって母親とリオンを招き入れる。
「わー、良い感じだねー。」
入ってすぐのところは広々とした居間兼食堂で、10人くらいが一緒に食事ができそうな大きなテーブルがあった。
お風呂とトイレも1階にあり、寝室は2階にあるらしい。
電気は太陽光や風力発電で賄っているそうで、蓄電池はリオンがすんでいる町で買ってきてもらったそうだ。
森の国からワークランド(リオンたちが住んでいる町のこと)へ主のカイトは出られないが、働く為に町に家を持っているものがほとんどだった。
昔は、カイトもそのうちの一人だった。つまり働けるものは出稼ぎに行き町で住み暮らし、戻れるときは森の国に戻ってきていたのだ。
ワークランドと森の国の行き来はこちらの住人が望んだときにだけ抜け道が現れる。
デパートでリオンがここに通じるドアを見つけたのも、カイトがリオンとミサコに会いたい気持ちがドアを出現させたのだった。
これからは、デパートまで行かなくてもいつでも会えるしこっちに来られるようにするからと、カイトは森の国の丸木小屋にリオンの家に通じる抜け道を作った。
「私は通れないが、二人ならいつでも行き来できる。
なんだったら、今日はこちらで過ごせば良いよ。」
「お父さん、どうして今までは通り道を作らなかったの?」
「それは、お母さんがこの国のことを話しても信じてなかったし、受け入れてもらえないと思って諦めていたんだよ。」
「ごめんなさいカイト…。私はまさかこんな国があるなんて、今でも不思議な感じだわ。」
「ここで暮らしてみれば本当だってわかるさ。」
「そうだよね。じゃ、今日はお母さんと私、ここにお世話になります。お父さん、よろしくね。」
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