二章 山賊退治

33/42
前へ
/75ページ
次へ
「──どうでしょうか。 その類まれなる器量を生かし、この地を我らと共に──『自警団』として、守っていく気は、ありますか?」 命令でも強制でもなく、ただ意向を聞くだけ。 そんな問いかけに、山賊達が息を詰まらせながらランディスを見つめる。 そうしてその目は自然と自分達の頭──ゼインへと向いていった。 エスメラルダがようやく、ゼインの首筋に当てがっていた剣を下ろし、ゼインを解放する。 ゼインは──全く予想もしていなかった展開に、他の山賊達と同様息を詰まらせて、そして彼らの顔を見た。 その心は皆、同じだった。 誰が合図をした訳でもなく──ゼインと山賊達は皆一様(いちよう)にランディスへ向けて跪く。 「──命に代えて、協力させて、いただきます」 熱く震える様な、涙声でゼインが言う。 他の山賊の面々も皆一様に涙に顔を濡らしていた。 その歓喜の涙とゼインの言葉に、アスタルが「あら、」と明るい声をかける。 「命に代えられてもらっては困りますわ。 あなた方自警団には末永くこの地を守っていって欲しいのですから。 期待していますわよ」 にこっと──まるで天使の様な微笑みでアスタルが言う。 山賊達の間からずびっと鼻を啜る音、けれどもへへへと笑う声がする。 こうして──アスタルの『山賊退治』は幕を閉じたのだった──。
/75ページ

最初のコメントを投稿しよう!

10人が本棚に入れています
本棚に追加