二章 山賊退治

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「──整った見た目に似合わず、子供ながらに鋭く研ぎ澄まされた刃物の様な雰囲気を持った方でございました。 その後直接お会いする事はありませなんだが、今現在の動向や政治手腕などを見ておれば現在の内面も自ずと知れるというもの。 甘いマスクと言葉にうっかり騙されたりされぬ様、重々注意するのですぞ」 「ええ、しかと承りましたわ」 にこっと笑ってアスタルが答える。 どちらかと言えば、エスメラルダやランディスからすればアスタルが王子の甘いマスクにでも言葉にでも心惹かれてくれた方がいい気もするのだが。 もうそんな次元の問題ではなくなっている事に、二人ももちろん気がついていた。 アスタルが王子の事をどう思おうが、王子は既にアスタルに大層怒り狂っているはず。 色恋沙汰の話はもう摘む芽もないに等しい。 思いつつ……ランディスは僅かに目線を下げて、先程アスタルが言った言葉に思いを巡らせる。 『良くて尼僧にさせられて修道院行き、悪ければ廃嫡の上死刑、といったところでしょうか』 ランディスは咄嗟に『さすがの王もそこまではしないだろう』と答えたが、本当にそうであろうか? 実の所アルケット王子やワイズ国の手前、王はアスタル処刑の方向で処罰を決める他ないかもしれない。
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