実葛~望まぬ再会~

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「若いエリートだって聞きましたよぉ、楽しみですね」  にっこりと微笑む女性社員に、思わず鋭い視線を飛ばしてしまう私。いかんいかん、このままだと鬼瓦のようになってしまう。慌てて表情を緩めたが、すでに女性社員は自分のデスクに逃げ帰っていた。  新部長が来るのは今日の午後。私は六月の勤務表とにらめっこを始めていた。新部長に各職員の仕事の割り振りを話さなければいけない。  個々の能力を把握しながら、部署全体としての生産効率を上げる――これがなかなか難しい。同じ仕事をAは一時間でこなし、Bは二時間かかる。だが、そこで無理にAに仕事を振ると仕事量が多いと文句が出る。ではBの方に簡単な仕事を割り振ると、なにも任せ貰えないと文句が出る。その文句をやり過ごし、なんとか仕事をさせるのが私の役割なのだろうが――その私自身が無能なのだ。手に負えていないというのが現状。  デスクにかじりついていると、きゃぁと若い社員の悲鳴が聞こえた。慌てて顔を上げて、私も思わず悲鳴を上げそうになる。 「今日からここの部長を務める梛だ、よろしく」  
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