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「いろいろ部署の問題点がわかった。今日はありがとうな」
「これからよろしく」
「任せろ、契約は一年なんだ、一年以内に改善させてやるから」
契約は一年――その後、梛君は再びアメリカに帰る。心の奥底にしまった思いは、絶対に蓋を開けてはいけないと肝に銘じる。この一年、ビジネスパートナーとして部署の改善に勤めよう。
「夏本、俺がこの仕事受けたのはさぁ、メディカルシステムITソリューションズが、おまえの勤める会社だからだよ」
どきんと、心が跳ねた。梛君は、私が必死に閉じている心の鍵を、無意識に壊そうとして来る。残酷な人だ――
「はいはい」
「働きやすい部署にしてやるから」
「はいはい」
「おい、ちゃんと信じてるか?」
適当に応えていると、梛君は私の頭をぽんっと叩いた。
「セクハラで訴えます」
「おいおい、冗談通じないなぁ。あはは、夏本らしいか」
冗談なら、尚更やめてほしい。私はきらりと光る梛君の薬指を見つめてから、そのあどけない笑顔を睨んだ。
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