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【馬鹿なこと言わないでよ】
【そうだよね、ごめん。でも、何かあったら何でも言って、なんでも聞く】
【ありがとう】
みなみは山南君を失った大きすぎる悲しみを、多くは語らずに一人で乗り越えてしまった。そんなみなみに、私の愚かな過ちなど、到底話せるはずもない。
翌日からの仕事は今まで以上に気を張っていた──と言うのに、梛君は事ある毎に話しかけてくる。必要な会話は仕方がない。だが──
「夏本、今夜空いてるか? 一人飯嫌なんだよ」
「空いていません。子供じゃないんですから一人で食べてください」
こんな風に話しかけてくるのは、やめていただきたい。梛君が口を開くと、部署の女性社員がざわつくのだ。
【迷惑極まりないわ】
たまらずに送ったメッセージに、みなみは大丈夫なのかと心配するような返答をくれる。みなみは今、新しい恋を育てているところだ、これ以上私事に巻き込むのは良くない気がする。
みなみに話すのをやめよう──
私は梛君を適当にやり過ごしながら、最初の一月を乗り越えた。
あと、十一ヶ月──
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