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梛君が来て三ヶ月が経った頃の事だ。
「朝海……いや、夏本さん」
遅い昼休憩を取ろうとすると、聞き覚えのある声に呼び止められた。私はため息を吐いてから、振り返る。
「なんでしょうか? 小嶋さん」
総務課の小嶋太亮だった。私の部署の小嶋さんの夫にして、三年前に私を振った元彼でもある。
「亜美のことで話があるんだ」
「どうぞ」
「ここではちょっと……」
亜美、というのは、太亮の奥さんのこと。仕方なく私は一度デスクに戻り、第三会議室にいます。と書置きを残して太亮のもとに戻った。第三会議室は同じ階にあるワークスペースだ。会議室とは名ばかりで、室内には自販機もあり、歓談スペースと言ってもいい。昼休憩中は賑わうが、仕事中に使用する者はほとんどいない。
今は15時、正規の昼休憩はとっくに過ぎている。
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