869人が本棚に入れています
本棚に追加
/94ページ
あの日は、私が取り乱したからいけないのだ。私に太亮のことを忘れさせるために、梛君は私を抱いたのだろう。
そこに、なにか特別な感情があったわけではない。あっては、いけない。
まるで、出口のないトンネルのなかにいるみたいだ──
私の恋には光は見えない。
「あと、九ヶ月の辛抱だから……」
そもそも、梛君の行動が理解不能だ。彼の行動に他意はない、振り回されてはいけない。一人で騒いで馬鹿みたいだ。
暗い車窓に映る疲れた自分の顔を見て、私は苦笑いをした。
最初のコメントを投稿しよう!