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翌日、目が覚めると梛君はもういなかった。心にぽっかりと穴が開いたような気分だ。この穴を、この後どうやって埋めて行ったらいいものか。リビングのテーブルの上に何やら白い紙と鍵が置いてある。紙の上に、整った字が並んでいた。
【朝海、おはよう。俺は先に出る。この三日間、本当に幸せだった。俺の我がままに付き合ってくれてありがとう。俺のマンションはあと六か月間好きに使っていい、鍵を置いておく。六か月経ったら契約が切れるから管理室のポストに鍵を返してくれ。愛している】
「勝手な男」
最後だといいながら、あのマンションいまた来いとでもいうのだろうか。
「好きに、使っていい……?」
読み返して違和感を覚える。まるで、そこに梛君はいないかのようだ。どういう、ことだろうか――
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