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明里の会社で働き始めてあっという間に三か月が過ぎた。その間に、私のお腹は見違えるほど大きく膨らみ、体形が大きく変化した。
明里の計らいで休みやすい体制にしてもらっていたが、幸い体調は落ち着いていて、仕事に支障はなかったと思う。記事を書くという初めての仕事もかなり楽しいと感じた。
「もう産休かぁ、石原さんも頑張ってくださいって言ってたよ~あんたの名刺できたけどいる?」
「いや、いいや、戻ってきたときにちょうだい。失くしたらいけないし」
「あんまり無理しなさんなよ、みなみは忙しいだろうけど、私のことは呼びなよ」
「誰か他の人寄越すけどって言うんでしょ?」
「あはは、そうそう。私が行っても役に立たないだろうし、日野っち送り付けるから」
「日野さんいいねぇ、癒し系嬉しい~」
明里はそう言って、若い社員の名前を挙げた。
「私も喜んで伺います~食べたいものがあったら言ってくださいね~」
日野さんは人好きのする柔らかい笑顔を向けてくれる。
「体に気を付けなさいよ」
「明里、何から何まで本当にありがとう」
「感謝しなさい!」
そう、にぃっと笑顔を見せる明里や同僚にに送り出されて、私は産休に入った。
こんなに穏やかな気持ちで休みに入ることができたことに、感謝の気持ちでいっぱいだった。
世の中はきっと、捨てる神ばかりではない。
そう、思っていたというのに──
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