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ピンポーン
職場復帰が近づいたころ。つかまり立ちをするようになってますます目が離せなくなった撫子と遊んでいると、チャイムが鳴った。
ディスプレイにはいつものように明里が写っている。
「やっほー朝海、今上がれる?」
「うん、散らかってるけど」
「そんなん気にしない、気にしなーい」
「待ってて、今開ける」
私は撫子を抱きかかえて、開錠のボタンを押した。しばらくすると、再びチャイムが鳴る。今度は玄関の前だ。撫子が音につられて玄関にハイハイをしていってしまうので、慌てて追いかける。
「ちょっと待って!」
玄関のわずかな段差から撫子が落ちる前に抱きかかえて、一息ついてから玄関を開ける。
「いらっしゃー……」
扉の向こうにいたのは、明里ではなかった。
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