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「感謝してよね! 全部、私の計画どおりなんだから!」
後日、結婚の報告をしに行ったとき、明里は満面の笑みでそう言った。どうやら、私と梛君の再会から今までのことには、すべて明里が絡んでいるというのだ。
「明里に聞いたんだ。おまえが結婚するつもりだった男と別れたって、居ても立ってもいられなくなって、行く予定のなかった同窓会に参加した」
「報酬は仕事の契約、無事に朝海と結婚出来たらうちの会社と契約取ってくれるって約束したの。いろいろ手を尽くしてあげたのよ、感謝しなさい」
「明里……あなた……」
「ふふ、WINーWINでしょ?」
悪びれた様子のない明里に、相変わらずだと笑みが漏れる。
「明里らしい、本当にありがとう。感謝してもしきれないわ」
「感謝は無用。私、善意だけじゃ働かないのよ、報酬はちゃーんと旦那の方に支払ってもらいますから」
「遠慮がなくていい。礼は仕事の方で返すからな」
「どうぞ御贔屓に。どうせアメリカ行っちゃうんでしょ、帰ってくるときはお土産持って来なさいよ」
「たくさん持ってくる!」
笑顔で明里と別れて、梛君を空港に見送りに行く。結婚式は日本で、親しい友人と親族を招待してこじんまりと行う予定でいた。
「撫子、ママを頼んだぞ」
「ちょっと、逆でしょう?」
「いいや、おまえは誰かが見張ってないと一人で突っ走るからなぁ。無理すんなよ、俺が迎えに行くまでいい子で待ってろ」
キスを交わして、梛君は搭乗口へ向かう。婚姻届けだけを提出して、次に会えるのは半年後の結婚式――
「今まで待った時間に比べたら、あっという間だわ。ねぇ撫子」
誰に似たのか、撫子はにこにこと愛想よく笑っている。撫子は飛び立つ飛行機を見上げて手を振った。
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