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梛君と再会の日は半年後。
再会の後は、撫子と二人だけの時間が異様に寂しく感じた。でも大丈夫、もう、一人ではない。梛君は、必ず私を迎えに来てくれる――。
ピンポーンとチャイムが鳴った。撫子が一人遊びをしているのを横目で確認しながら私はインターフォンのボタンを押す。
モニターには、見覚えのある女性が写っていた。忘れるはずがない、梛君の奥さんだ。
ドクンドクンと、心臓が音を立てる。居留守を、使うべきだろうか……使ってしまいたい。でも――
「は、はい」
【お久しぶりです、蓮野と申します】
モニターに映る彼女は、以前のように梛――とは名乗らなかった。
「お久ぶりです」
【突然すみません、少し、お話をすることはできますか?】
「はい……」
何を、言いに来たのだろうか。梛君は彼女も納得して離婚をしてきたといっていたはずだ。大丈夫……大丈夫。
私は自分に言い聞かせてエントランスの開錠ボタンを押す。
「どうぞ」
もすぐ、梛君の奥さん――いや、蓮野さんがここにやってくる。私は、どんな顔を見て迎えたらいいのだろうか……。
二度目のチャイムが鳴る。私は大きく深呼吸をした。
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