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白いウェディングドレスに身を包む。リングメイドになってくれる撫子はきちんと大役を果たせるだろうか?
「朝海、入るぞ」
「どうぞ」
妖精のような可愛らしい格好をした撫子を片腕に抱いた瑛佑が控え室に入ってくる。白いタキシードに身を包んだ彼は、思わず赤面してしまうほど素敵だ。
「まま、きれい」
たどたどしい撫子の言葉に、思わず顔がほころぶ。
「だなぁ。撫子のママはとっても綺麗なんだ。これからパパはママと結婚式をするんだよ、おまえも、大事な指輪をちゃんと持ってきてくれよ」
撫子はにこにこと嬉しそうに笑顔を見せている。可愛い私たちの娘。
「撫子、とっても可愛いわ」
「おいおい、俺のことは褒めてくれないのか? 奥さん」
私はぱっと顔を赤らめた。今日の瑛佑はいつも以上に素敵だ。照れてしまって直視できない。
「……すごく素敵」
「あたりまえだろう?」
「もう、自信家なんだから」
「朝海も世界一綺麗だ。俺の朝海は世界一綺麗な花嫁だよ」
「そういうこと簡単に言わないでよ……」
顔が熱い、こんな年になってまで、大人げないではないか。恥ずかしい……
「何度だって、毎日だって言ってやるって。世界一綺麗だ朝海」
愛してるよ――耳元でささやかれる言葉に、脳が溶けてしまいそうだ。瑛佑はそんな私の反応を楽しそうにみている。
「いじわる」
「朝海が可愛すぎるからいけない。いじめたくなる」
「ドS!」
「誉め言葉だな」
まぶしい笑顔を浮かべる瑛佑に手を引かれて、私はみんなの待つチャペルへ向かう。神様に誓うわけじゃない、瑛佑に、撫子に、そしてこれから生まれてくる新しい命に誓いたい。
どんなときも、瑛佑を愛し、信じ、支え、ともに生きていくことを――
私がこの手を離すことは、もう二度とない。
「瑛佑、愛してる」
何度でも伝えたい、この思いを――愚かなまでに、あなたのことを愛している私の、この気持ちを。
【揺れる苧環 終】
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