睡蓮の恋・3

2/3
前へ
/54ページ
次へ
 そんな風にすると、カラコンなしでも黒目がちの大きな瞳がペルシャ猫のようで、貴女の方がよっぽど可愛いですよ。  黒い服着せて赤いベルベットのリボンを首に結びたい。絶対似合う。っていうか、その恰好で彼氏の前に出しちゃ駄目だ。 「私が聞いたのは、葉が金持ちの彼氏と付き合ってるってこと。そうか、結婚まで話が膨らんだか」 「金持ちの彼氏って、そこからおかしいって」 「高そうな外車に乗ってるって聞いたよ」  なんだそれ。うん、待てよ、車……? 「キラッキラしたゴージャスなブレスレットもプレゼントされてるって」  ……それって。  私はポケットから牡丹のブレスレットを取り出した。今朝、なんとなく付けて来たら外し忘れてて、朝礼の時に気付いて慌ててポケットにしまったのだ。ピアスは更衣室でちゃんと外したんだけど。  やっぱり普段付け慣れていないから、忘れちゃったんだろう。 「ゴージャスなブレスレットって、これのことかなぁ」 「……あらキレイ。牡丹ちゃんのお手製デスカ」 「ええ、こちらスワロフスキーをふんだんに使用した逸品でございまして、ゴム紐の結び目が飛び出してるのが可愛らしいアクセントになっております」 「まあ、目に痛いほどキラキラ輝いていますわね」  訳知り顔で大げさに頷くと、二人で顔を見合わせて吹き出してしまう。  ひとしきり笑って、なんだかバカバカしくなった。 「車ってそれ多分、純也さんだよ」 「ああ、ディーラーにお勤めのお義兄さん。そりゃあ仕事柄いい車に乗るわ」 「あの車、ほとんど社用車で営業車だよ。すっごい乗り潰してるし。先週の金曜、ご飯食べに行くのに迎えに来てくれた。でも変なの、後部座席にはお姉ちゃんも牡丹もいたのに」  もう、そうすると噂の出どころなど限定される。  どっちだ。それとも両方か。
/54ページ

最初のコメントを投稿しよう!

603人が本棚に入れています
本棚に追加