睡蓮の恋・1

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 今日買いに来たのは、姪の牡丹(ぼたん)の服。小学二年生になる姪は、当然だが毎年服のサイズが変わる。下手をしたら同シーズンの初めと終わりでサイズアップすることもあるくらいだ。  身内に年の近い同性もいなくてお下がりなどは期待できないため、姉はこまめにセールチェックなどしている。  二人の最近の行きつけだというこの店は、私が一人なら素通りするタイプのショップ。  店内はレースとフリルとリボンで溢れ、スーツですらヒラヒラがたっぷりとついている。奥にあるセレモニー用のドレスは、もう、本領発揮と言わんばかりのロマンティック全開……ごめんなさい、私には無理です。  姉が着ているのもここの服だと言うが、店内で目につくものより格段にシンプルだから、探せばそういうのもあるのだろう。店内の客層も、十代の若い子よりも自分と同年齢より上と思しき女性が多いのも意外だった。  ファストファッションよりは多少値が張るが、高いという程ではない。縫製の質が良く長持ちする。着心地がいい。女児服の扱いもあって買い物が一度で済む――この辺が姉のお眼鏡にかなった理由だ。  肝心の牡丹はといえば、気に入ったカットソーとキュロットスカートを見つけてあっという間に買い物は終了。  子ども服もそれなりに量があるのに迷うそぶりもなく、ちらりと店内を見回して真っ直ぐに進み、これがいい、と持ってくるのには驚いた。 「話には聞いていたけれど、本当に即決だね」 「でしょう? 悩まないし、変えないもの。純粋に好きかどうかだけで選んでるのよ、この子」
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