睡蓮の恋・1

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 親である自分がチェックするのは値段とサイズくらいだと、姉は苦笑いだ。手にしているのは確かに姪の好きそうな色、柄、形。 「こっちは着まわしとか洗濯とか流行りとか、いろいろ考えるじゃない。そう思って勧めても、自分が気に入らないと絶対に頷かないの。買っても着ないのよ」  さすがに発表会のようなドレスは却下するけれど、と。 「牡丹を見ててね、好きな服を着ればいいんだって思うようになったのよ。仕事上ではTPOがあるだろうけれど、私生活ではね。誰に迷惑をかけるわけでもないし、好み丸出しでいいんじゃないかって」 「あー……そうかもね」  それで最近はヒラヒラが多いのね、お姉ちゃん。公園で子どもを追いかける必要がなくなったから、スカートを履くようになったとばかり思っていたけど、それだけじゃなかったんだ。  納得しつつ店を出ようとした時に、入り口近くのバーに吊るされていたこのスカートが目にとまった。他の服の隙間に細く見えた水彩画のような大胆で繊細な色に、つい指を伸ばし裾を広げてみたのだ。 「きれい! ようちゃん着てみて!」  布が見たかっただけなのに。『ぜったい似合うから』と、きらきらした目でねだる姪に押し切られて、私は今ここにいる。
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