睡蓮の恋・1

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 そのスカートに合いそうよ、と姉に渡された白いブラウスは前側はシンプルだが背中がカットレース仕立てになっている……お姉ちゃん、アナタは店員ですか。  ふう、と軽く溜息をつき諦めて備え付けのフェイスカバーを被った。購入前の白い服だ、間違っても化粧などつけたらいけない。  やがて上下とも着替え終わったが、先ほどまでしていた二人の声は聞こえなくなっている。店内を見に行ったかな。ようやくと落ち着いて全身鏡に映った自分を眺めた。  あれ……案外、いいんじゃない。  って、いや、ちょっと待て待て。  ついさっき自分で思いっきり駄目出ししてたよね。なにそんな舌の根も乾かぬうちから前言撤回って。  落ち着いて、もう一回よく見てみよう。だって似合うはずがない。  前後左右、ちょっとくるりと回ったりして……ふわっと広がるラインが綺麗。立っている時の落ち感も好みだし、ボリュームも適度。しかも、わりと長身の私が履いてこの足首までのマキシ丈ってかなりレア……ああ、肩紐つけてワンピースにもなるツーウェイだからか。ふうん。  それにこのブラウス、布が柔らかくて着心地がいいな。少し短めの着丈はスカートとのバランスもいいし、手持ちのパンツにも合いそう。  値段も高くない。上下で買っても通勤用のジャケット一枚より安いわ。しかもお姉ちゃん優待チケット持ってたから、さらに二割引きだ。  これくらいなら失敗しても諦められるし、なんならお姉ちゃんにお下がりすればいいか。
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