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「それと…。」
と言ってカバンからかわいい小袋に包まれたものを渡してくる。
「昨日、ちょうどクッキー焼いたから、お礼にと思って。よかったら食べて。」
「え、いいの?」
「うん。多分、まずくはないと思うから。」
と少し照れながら笑っている。
「筆記用具貸しただけなのに、こっちが申し訳ないよ。」
「気にしないで。たまたま昨日作ったから、いいお返しになると思って。」
「ありがとう。あとで楽しみに食べるわ。」
「あ、でも…。味の期待はあんまりしないでね。」
とまた照れながら言う。その姿が可愛らしくて、こっちも思わずにやけてしまう。しかし、その瞬間二つの視線に気づいた。一つは匠のいかにもいいネタを仕入れたと言うニヤニヤした視線と、藤本からの冷ややかな視線。どっちも後から面倒くさくなりそうだと思いながらも、
「本当にありがとう。すごい嬉しいよ。」
「よかった。じゃあ、またね。」
と言って東條は冷ややかな視線を向けている藤本の元へ戻っていく。そして、こっちにはすかさず匠が寄ってくるが、
「匠、ここは何も言わず余韻に浸させてくれ。」
と呟く。すると、匠は爆笑しながら
「健二はやっぱバカだな。」
と言って笑いながら離れていく。なんとでも言えと思いながら、早く放課後になってゆっくり食べるのが楽しみで仕方なかった。
そうして、始業のチャイムが鳴り、授業が始まるが、今日はほとんど頭の中はクッキーで上の空だった。
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