違和感

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 頑張ったが結局早くは終わらず、校門を出ながら時計を見ると17:08だった。もういっそのこと歩きながら食べようかとも思ったが、それでは勿体無いと思い、少し早歩きで家路を急ぐ。  商店街を抜け交差点へと辿り着くがちょうど赤信号に変わってしまった。ここは四車線道路のため信号が長い。少しイライラしながら睨んでも変わらないのはわかっているが、今か今かと歩行者信号を睨んでいるときに、目の端にある人が飛び込んできた。四車線の道路を挟んだ先に、東條を見つけたのだ。あちらはこっちに気づいている様子はない。最初はクッキーのことばかり考えていたから、見間違いかと思ったが、よく見ても東條だった。しかしこの瞬間にデジャヴのようなこんな光景見たことあるぞと心の中で思っていた。何だったかなと考えているうちに、気づけば歩行者信号の待ち時間を知らせる小さい表示のカウントがあと一つになっていた。そして、視界の左端から一人の男が駆けてくるのを見たときに全てを思い出した。 「やめろっー。」 と心の底から叫ぶが、その時にはその男の刃物は東條の体に届いていた。 「東條ー。」 と叫びながら思わず駆け出していた。幸い信号は青になっていたらしく、車と接触することなく、東條の元へと駆け寄れたが、既に東條の意識はなく、脇腹から夥しいほどの出血が自分の手まで染めていく。視線上げるがそこにはもうその男の姿はなく、周りは救急車だ、警察だ、と騒いでいるだけだった。何でこんなことにと思いながら、ただただ言葉にならない声を叫び続けた。
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