第一色・―この赤に至るまで―

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 目の前で震えてる。血塗れ。赤に染まって。怖いと聞いたら、無言のまま首を横に振って、大人になったら絶対お前をタイホしてやる、と睨まれました。  ……タイホ? よく分からないのですが、新しいボクは誕生しなかったんですかね?  まぁ良いか。取り敢えず今のところは、五歳にかつて五歳のボクが感じたのと同じ感じを味わってもらえたですと思いますから、成功と言いたいです。  いつか五歳がまた、ボクと出逢った時には、また、新しいボクが生まれていると信じましょう。  赤です。  赤は、五歳のボクが唯一拘る色です。  赤、赤、赤。  まだ生きを残していた刑事を、抱えて、五歳の、目の、前で、喉を掻き切って殺りました。  五歳が初めて悲鳴をあげたかとオモうと、そのまま赤に染まって、倒れちゃった。  きぜつした。  これで良い。  完成だ。  新しいボク、お誕生日おめでとうございました。  これから先、どんなに時を経ても、今日の出来事を絶対に、一秒たりとも忘れない事でしょう。  おめでとう。忘れない事でしょう。  さぁ、追い駆けてこい。俺は待っている。  ずっと、ずっとずっとずっとずっとずっとずっと。  待っているから、必ず赤を追い駆けてこい。  そうしたら本当に、新しいボクが完成する。  サヨウナラ、せかい。          ―了―
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