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───五月一日。
俺は、夢を見た。
俺の目線の先には、明るく元気に走っていく女性が一人。
肩下ほどまで伸びたその綺麗な茶髪の髪を揺らしながら、その女性は俺の前を笑顔で走っていく。
俺と同い年くらいだろうか、その女性を見ているとすごく心が温かくなる。
「朋っ! 早く早くっ!!」
女性は少し先で振り返り、柔らかく、そして温かい笑顔で俺の名前を呼ぶ。
なぜだろう。
その女性を見ていると懐かしく、そして悲しくもなるのだ……。
俺の……、大切な人。
「朋ってばーーっ! 早くーーっっ!」
その女性はそう言いながら先へ先へと走っていく。
俺の足は動こうとはしなかった、それはなぜだろうか分からない。
彼女は、いったい誰なのだろうか。
彼女を追いかけて誰なのか聞きたい、教えてほしい。
キミはいったい────
「朋ぉっっ! 早くって言ってんだろがぁっ!」
『ドゴォォッッ!!!』
「おぶぅっふぉぁっ!!」
朝、宿敵とも言える五月蝿い目覚まし時計ではなく、お腹に物凄い衝撃を喰らって俺は目覚めるのである。
これはなにも初めての出来事ではない。
そう、この家に居候して早くも一ヶ月、そのほとんどの朝が「お腹に衝撃を喰らって起こされる」、それが日課になっていた。
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