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「大丈夫、御園生? 足、ふらついてる」
奈津子に腕を持って支えられる形で、店の暖簾をくぐった。
「大丈夫。頭はしっかりしてるし、意思の力で歩いてやる」
お酒には弱いほうじゃない。それでも、ジョッキの半分以上をウイスキーの原液で満たしたハイボールは、初めて挑戦したけど、なかなかにパンチがあった。グチグチと悩みを抱えているせいも、たぶん、ある。
「御園生さん!?」
アルコールで若干ふわふわした脳内に、まだそれほど懐かしくない声が響く。そんなことあるわけないと思っているから、最初は幻聴かと思った。
声の主は、十メートルほど先にある牛丼屋の前から、ピンクと白のシャツの裾をパタパタさせながら駆け寄ってきた。
「うわぁ、偶然! これって運命じゃない? て、どうしたの御園生さん? 具合悪いの?」
正面に立った田端くんはニコニコしたかと思うと、心配そうに下から顔を覗き込んでくる。
うわぁ、ぜんぜん堪えてねぇ、とのけ反ってからふと隣を見たら、奈津子も似たような表情と体勢をしていた。
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