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田端くんは、受け取ったわたしの腕にガッチリしがみついた。振りほどこうにも、さすが男性と言うべきか強い力でビクともしない。
離すことに成功したところで、本日二度目のスプリントに挑むのは、このクラクラと回る視界では無理。
「えへへぇ。役得」
チョコレートにメープルシロップをかけたみたいな、極甘な笑顔で田端くんは嬉しそうにこちらを見上げる。わたしを虫歯にする気か。
その横を、スーツ姿の男性二人組が通り過ぎていった。
すれ違いざまに、ほろ酔いの口から飛び出したのは、あからさまなわたしへの嘲笑。
「でけぇ女。ハイヒール履いたら巨人じゃん。あれは、並んで歩くの恥ずかしいな」
思いがけずえぐられる、過去の傷。
「……てめぇ、待ちやがれ!! てめぇみたいな根性も顔もひん曲がった男とは、こっちが歩くの恥ずかしいんだよ!! ボケがぁ!!」
ロケットスタートをした奈津子に驚いた男たちは、一目散に逃げた。
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