チョコラティゼ

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「……パワフルなんだね、麻生さんって」  麻生は、奈津子の苗字。彼女も同期だけど、営業部とそれほど接点がないはずの田端くんだから、面食らってしまうのは無理もないと思う。  わたしは、その表情を確認できないでいた。逃げる男たちをどこまでも追いかける奈津子の後ろ姿が、人混みに消えたのを見たあとで、うつむく。 「……田端くんだって、正直なところ恥ずかしいって思うでしょ?」 「え?」  耳に届いてきたのは、困惑した声。否定しないってことは、そういうことだ。掴まれたほうも、そうじゃないほうも、こぶしを強く握る。 「……わたしだって、恥ずかしいよ。田端くんと並んで歩いたら、わたしが大きいの目立つじゃん。わたし、嫌いだよ。田端くんが嫌い。なんでそんなに身長が低いの? それが、受け入れられない理由だよ」  さっきの田端くんの告白が、まるきりデタラメを並べただけとは思っていないわたしがいる。本音を言えば、嬉しかったわたしがいる。  だけど、悲しみの海に放り出されてしまった今のわたしには、どんな光も温度も届かない。気泡を吐き出しながら沈んでいく一方だ。砕けた珊瑚を飲み込んだ胸は、キリキリ痛くて目の端に涙が滲む。
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