チョコラティゼ

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「ごめんね」  田端くんが謝る声に、わたしは顔を上げた。  こっちを見上げる田端くんは、笑っていた。目尻をやわらかく下げて、口角はゆるやかに上げて、まぎれもなく笑顔だけど、泣いているみたい。 「本当にごめんだけど、もう背は伸びそうにないよ。成長期終わっちゃったし」  わたしは唇を小さく開く。謝ろうとした。なんてことを言ってしまったんだろうと思った。田端くんを傷つけたいわけじゃなかった。  だけど、次の田端くんのセリフと笑顔は、わたしの言葉と、ぐちゃぐちゃした心をすっぽり飲み込んだ。 「でもね、背が低いといいこともあるんだ。御園生さんが落ち込んだり、疲れていたり、そうやってうつむいたときに、オレは誰より早く気づいてあげられる。強がった声を出してみせたって、下から見たら泣きそうな顔をしているのなんか、丸わかりなんだから」  それは、まるでなめらかな舌触りのチョコレートみたいに。あの日田端くんがくれた、あのミルクチョコレート。甘い優しさが、わたしをふんわり包み込んで溶かしていく。  溶けた心は、温められて、悲しみは、するすると蒸発していった。
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