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田端くんは、またひゅっと眉毛のお尻を下げる。
「だから、もう一つごめん。オレ、やっぱり御園生さんを諦めきれない。背の低さをカバーできるように、めちゃくちゃ頑張るからさ。チャンスをくれない?」
わたしは、どっと涙を溢れ出させた。拭わないから、顎を伝う雫はポタポタとアスファルトに落ちる。
慌てた田端くんが、急いで自分の衣服のポケットというポケット、リュックの中を探り出す。何も見つからなかったらしく、最後にはシャツを脱いで、それでわたしの顔を拭った。汗臭い。
「どうしよう、どうしよう、御園生さんを泣かせちゃった。ごめんね、ごめんね。でも、本当に大好きなんだ」
ごめんねと大好きを連呼しながら、田端くんはわたしの顔面をイチゴミルク色のシャツで擦る。
「……うん。わかった。もうやめて。いや、やめたところで、擦られたメイクの悲惨さはもう変わりようがないのだけど。あと、シャツが汚れる」
田端くんは手を止める。
「え? 付き合ってくれるの?」
「……うん」
「ええ!?」
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