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その返事を求めていたんじゃないのかと突っ込みたくなるほど、田端くんは全身を硬直させて驚いた。
「本当に!? いいの!? 待って、よく考えて!」
「わかった。考え直す」
「あああ! 嘘です! ……え、でも、本当にいいの? 繰り返しになるけど、背は伸びないよ?」
「うん」
わたしが君を嫌いだったのは、たった一つの理由から。
でも、それはつい今しがたから、他のどんな長所とも比べものにならないくらい、魅力的な要素になった。
だから、今の君に、嫌いになる理由なんか一つもない。
「田端くんに会えたから、わたし、背が高くてよかった」
泣いた上に布で擦られてメイクが崩れた笑顔は、どう考えたって醜さ極まりない。それなのに、はち切れそうな笑顔を返してくれたことは嬉しい。
でも、路上で、しかも馴染みの居酒屋の前でのキスは、これっきりで勘弁して。
(fin)
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