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人の繋がりというのは、案外脆いものなのかも知れない。
あれから一週間。私が涼を避け続けていると、涼もそれを察したらしく、私に近づいてこなくなった。
幼馴染と言っても、家は少し離れた場所にあるし、高校に入ってからクラスも違うし、元々接点なんて少なかったのだ。
でも、流石に唯一の同胞を失ったのは寂しい。
私には昔から、友達が出来なかった。心の中で何となく、友達なんて面倒だ、必要ない、なんて思ってて、それがどこか、周りへの態度に表れているらしく……流石に全くの独りぼっちというのも寂しいけれど、涼がいたせいでそうではなくて、しかも、閉じて生活している内に、あんな趣味までできちゃって……
とにかく、私は今、全くの独りぼっちである。寂しい。そして、アイツはそうではない。ムカつく。
大体何なんだよ。あの時、涼と一緒にいたのは、よりによって学年一の美少女もとい美少年の、中大路明星……前からちょっと懐かれてたみたいだったけど、まさかそんな人気者と、そんな関係だったとは。
あー、ダメだ。なんか無性にイライラする。
「あの、高松さん。」
頭を抱えていたら、隣の席の子に話しかけられた。
ああ、人と話すのだるい……
「は、はい。な、何の御用でしょうか?」
緊張して言葉を紡いだけれど、クラスメイトに対して他人行儀過ぎたかな。やっちゃったかな。でも、私普段クラスメイトと全然話してないし、実際他人同然だし、こんなのがいきなり馴れ馴れしくしてきても変に思われるよね。うん。
いやぁでも、やっぱり同級生に敬語て……
ああ、わかんない。わかんないよぉ……
「消しゴム、落ちてたから。」
黒髪ロングの美人さんが、私に向かって笑いかける。
綺麗な人だなぁ……まるで、おとぎ話のお姫様か妖精さんかが、この世界に迷い込んでしまったみたい。こんな人が隣にずっといたなんて、なんで気づかなかったんだろう……
「あ、ありがとう。」
彼女から、消しゴムを受け取る。その細い指先が、私の手に触れる。冷たくて柔らかくって、なんでだろう、ちょっとドキドキした。生身の人間に触れたの、久しぶりだからかな。
とりあえず、今度はカジュアルにお礼を言えたから、ぐっじょぶ、私。
よし、このままお近づきになろう。これも何かの縁だ。なんか、この子とは、面倒でも友達でいたいなって思える気がする。私が面食いなだけかもしれないけど。
「あ、あのっ! お、お名前は……!?」
そう言うと美人さんは、
「えっと、腐頭由美だけど……」
と、困った表情で答えた。
「もしかして私、覚えてもらえてなかった?」
……っ! そうじゃん! 普通クラスメイトの名前くらい、まして隣の席の子の名前くらい、覚えてるべきじゃん!
「ご、ごめん! わ、私、あんまり他の人のこと見えてなくて、というか、どうでもいいとか思ってて……あ! でも、腐頭さんとは仲良くしたいって思ってて! ……あれ? 何言ってるんだろ、私。」
ああ、ダメだ。なんか、言葉が上手く繋がってくれない。一人でタイプしてる時は、あんなにスラスラ出てくるのに……
「えぇっと、つまり、お友達になりたいってこと? 私と?」
でも、彼女は緊張なんてしていないようで、スラスラっと言葉を繋げてくれる。
「そう、それ! 私とっ! 私みたいなのでよければ、友達になってください!」
あぁ、凄くぎこちない。きっと、変に思われた。
でも、言えた。私は初めて、友達を作ろうと動き出した。
「ふふっ、良いわよ。高松さんって、面白いわね。」
その時の友達の笑顔は、とってもとっても、綺麗だった。
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