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第二話 かたより
また、男の子同士のそういうのを見てしまった。
でも、今度は生身ではなく、イラスト。それも、とっても繊細なタッチで、その一本一本が生き生きとしていて……
「これ、由美が書いたの?」
「うん……まあ。」
驚いた。由美にこんな趣味があったなんて。
それに……
「上手……凄い。」
心の底から褒めるというのは、きっとこういうことなのだろう。自然に声が漏れてしまう。
その絵自体は、黒鉛でさらっと書かれたものらしいが、その中には生きた人間がいる。特別なひいきをしなくても素晴らしいと自信を持って言える、完成された絵を、目の前に居る私の友達が書いたのだ。
「凄いよ由美!」
「……それだけ?」
でも由美は、私に聞き返す。
そうだ。由美はこの綺麗な絵を隠していたんだ。それが、みんなが綺麗と思えるものではないから。
私も積極的にそう思えるわけではないけれど、似た者同士だから、決して否定したりはしない。
「私もね、似てるんだ。だから由美を、この絵を、凄く綺麗だと思える。ありがとう、本当の由美を見せてくれて。」
由美は怯えているんだ。自分のキレイを綺麗だと思えない人に、汚いって嗤われることが怖かったんだ。
だから私は、震えた由美の手を握って、大丈夫だって伝える。
「ありがとう、真姫……」
本当に安心した様子で、由美は手を握り返してくれる。
私も、伝えよう。そうすれば、きっと由美も、もっと楽になれる。
「由美、私もね……」
と、言いかけた時。由美もまた、口を開いて、
「真姫。私、あなたのこと、好きなのかもしれない。」
甘えたようなその声は、私の喉に栓をした。
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