9人が本棚に入れています
本棚に追加
悩んであんまり眠れないまま、次の朝を迎える。
由美は、今日も早く来ていた。昨日のことでちょっと前気まずくなりながらも、約束通り友達のまま接しようとすると、意外と簡単にできてしまった。昨日の悩みが一つ、解消されたわけだ。
「由美は、さ。今まで女の子を好きになったこと、無かったんだよね。」
「う、うん。」
由美に告白されても、何となくいつも通り過ごせているのは、あの日由美が言った「好きなのかも」という曖昧な表現に少しの希望を感じ、それに縋っているからだと思う。彼女が元々は女の子が好きだったわけではない、というのも、それを手助けしてくれている。
もし本当に、彼女の気持ちが勘違いならば、いずれ彼女にも本当の私を知ってもらえる。
……私は、本当に酷い人間だ。結局、自分のことしか考えていない。
こんな私が、由美の隣に居ても良いのかな……?
「あ、そ、そういえば明日から夏休みだね。」
私がしばらく押し黙っていると、由美が気を聞かせたのか、話を振ってくる。
夏休み……夏休みかぁ。
「学校がなくなったら、由美にも会えないのか……」
そうすると、またぼっちだな……結局、涼ともずっと話せてないし。
このままだと素直に趣味に没頭することも出来ないだろうし、本当に、憂鬱な夏休みになりそうだ。
「ねえ、真姫。夏休み、どこ行きたい?」
「親の実家かなぁ。おばあちゃんに会いたい……」
あぁ、あの片田舎にある、木と畳の匂いのする家で、優しいおばあちゃんに甘えて、何もかも忘れたい……
「いや、そうじゃなくてさ。一緒に行くなら、どこが良い?」
「一緒に……?」
「うん、そう。ほら、まだ一緒に出かけたことなかったし、折角の夏休みだから……ダメかな?」
由美の綺麗な顔が、微かに悲しみに歪む。不安に駆られて、泣き出す直前の子供のような感じもした。
そんな顔されて、断れるわけないじゃない……! それに、私だって……
「行きたい! ファミレスとかカラオケとか本屋さんとか色々……!」
「えっと、夏休みだし、もうちょっと遠出してもいいんじゃないかな。」
あ、確かに。全部駅前にあるや。
「ほら、夏だし、プールとか。」
ああ、そういえば少し遠くのでっかい公園のプール、リニューアルしたんだっけ。
「真姫の水着、見たい。」
由美が、キラキラってエフェクトが出そうな程輝かせた羨望の眼差しをこちらに向ける。
勘違い……じゃないのかなぁ……
最初のコメントを投稿しよう!