私が愛したこの世界

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私が愛したこの世界

 拝啓、小野田茉莉花(おのだまりか)様。  貴女にこうしてお手紙を書くのは、一体何通目になりますでしょうか。何度こうしてメッセージをお届けしても、貴女は私の言葉を無視してばっかりいらっしゃいますね。そろそろ、私の堪忍袋の尾も切れそうです。  この手紙を読んでいない?知らないフリをしている?そんなわけありませんよね。だって貴女は本当に根暗で、ネガティブで、小さなこともウジウジと悩んでばかりで、いつもクラスのみんなに迷惑ばかりかけているしょうもない人なのですから。  この手紙だってきっと、知らないフリをすることもできず、かといって捨てる勇気も持てずに取ってあるでしょう。もう一度読み返すだけの度胸もないくせに。  いい加減目を覚ましてはどうですか。  貴女はこの世界に、必要のない人間だということを。  貴女の今日の体たらく。見ていて心底私は呆れてしまいました。文化祭で、みんながどんだけ頑張っていたか見えてなかったのですか。高校最後の文化祭ですよ?それなのに、とても大変なお化け屋敷をやろうということになって、みんなで一丸となってセットを作っていたではありませんか。ダンボールも何枚も必要。壁を作るだけでも大変なのに、その後はうまく真っ黒な色を塗って、そしておどろおどろしい井戸や墓場のセットも作らなくてはいけない。  それなのに、貴女ときたらダンボールの調達係もできないばかりか、ダンボール用のカッターを持参してほしいと言われていたのにそれさえも忘れましたね。結局、筆箱に入っていた小さいカッターしかなくて、それでみんながどれほど使いにくくて困ったか気づいてましたか。  カッターの刃が折られて嫌だった、とグチグチ気にしている貴女を見てどれだけ私が殴りたいのをこらえていたか。そんなもの、大きなカッターを忘れた貴女がいけないんでしょう。小さなカッターしかないのなら、使いにくくて刃が折れてしまうのも全然仕方ないことじゃありませんか。  貴女はいつもそうです。いっつもいっつもそうですよね。ちょっと気に食わないことがあると、それをじーっと気にして他のことが手につかなくなってしまう。  ダンボールを切る以外にも仕事はあったじゃないですか。工作が苦手なら、衣装を考えるための相談に加わるとかしたらいかがですか?それなのにぼーっと突っ立ってるばかりで、どうすればいいかも思いつけずにオロオロオロオロ。それで結局サボってるの?とほかの子に言われて泣きそうになっているだなんて、ああ高校生にもなって恥ずかしいったらない!  それで、衣装の係のミーティングに加わったら加わったで、まともな意見も出せないなんて。  どうにか意見を言ったところで、一言言うごとに周りを凍らせているあたりもはや傑作でしたね。なんでこいつ呼んだの、という空気が流れるのも仕方ないことだったでしょう。本当に、貴女ときたら何をやってもお荷物です。救いようがありません。
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