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『なんだ、石?』
アスファルトの上に転がる小石が目に入った。
「ニャー」
安堵するのと同時にもう一度ネコの声がした。今度は間違いない。
鳴き声のした方向、橋の上から川の上流へと目を凝らす。
増水し流れが速くなった川に翻弄されながら、ダンボール箱のようなものが流れてくるのが見えた。
今にも沈みそうな箱の中で、小さな影が動いている。
考えるよりも先に体が動いていた。
橋の入り口の横にある、遊歩道へ繋がる階段へと走りよる。支えを失って倒れる自転車が、視界の端で異様なほどゆっくり見えた。
一段飛ばしで階段を駆け下り、水面ギリギリの段で急停止する。
両膝をついて上半身を川側にのり出すと、橋の下を覗くようにして川上を確認した。
『よし、ついてる。こっちにこい』
上手い具合にダンボール箱がこちらに向かって流れてくる。
『思ったより速いなぁ…』
川面を間近に見て、予想以上に流れが激しいことに気が付いた。
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