……その声を愛した、

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「佐野君、こちらが藤咲みなと君だ」 「は、初めまして! 今日からアシスタントとして入らせて頂きます、佐野諒一郎と申します! よろしくお願いします!」 極度の緊張からそう叫んで勢いよく頭を下げた僕の視線の先には、片方だけぷらんと浮いた小さなスニーカー。いくら待ってもしんとしたままの打ち合わせ室で、しどけなく組まれた細い脚のラインを辿るように、僕はそろそろと顔を上げた。 緩くウェーブのかかった長い黒髪を、砂糖菓子のような指が鬱陶しそうにかきあげる。そうして現れた印象的な丸い瞳が、でくのぼうのように突っ立った僕をゆっくりと上から下まで眺めて、それから興味を失ったように逸らされた。 そして小さな、けれどよく通る綺麗な声で、吐き捨てるように一言だけ。 「……うるっさ」 それが最初の出会い。
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