第十三章 おとうと

1/1
前へ
/23ページ
次へ

第十三章 おとうと

ハルカが背後に気配を感じて振り返ると、 アキヒトそっくりの若者が立っていた。 背は彼よりも5センチほど高い。 違うのは黒縁のウェリントン型のメガネをかけていることと、 頑なな表情だろうか。 ハルカがじっと見つめていると、 向こうも黙ってこちらを睨みつけるように見つめていた。 「あんた、誰?」 「おい、カイト!」 アキヒトが慌てたように言った。 「カイト、失礼な言い方はやめなさい。桜井さんよ!言ってたでしょ?」 お母さんも咎めるように言う。 「あの、桜井遥といいます。こんにちは。」 にっこりと笑いながら言うが、 ぷいっと視線を外された。 「アキヒトの弟のカイトです。 もう、この子は。反抗期でごめんなさいね。」 「いえいえ、大丈夫です。」 返しながらも、ハルカは不穏な空気を感じていた。
/23ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加