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第十三章 おとうと
ハルカが背後に気配を感じて振り返ると、
アキヒトそっくりの若者が立っていた。
背は彼よりも5センチほど高い。
違うのは黒縁のウェリントン型のメガネをかけていることと、
頑なな表情だろうか。
ハルカがじっと見つめていると、
向こうも黙ってこちらを睨みつけるように見つめていた。
「あんた、誰?」
「おい、カイト!」
アキヒトが慌てたように言った。
「カイト、失礼な言い方はやめなさい。桜井さんよ!言ってたでしょ?」
お母さんも咎めるように言う。
「あの、桜井遥といいます。こんにちは。」
にっこりと笑いながら言うが、
ぷいっと視線を外された。
「アキヒトの弟のカイトです。
もう、この子は。反抗期でごめんなさいね。」
「いえいえ、大丈夫です。」
返しながらも、ハルカは不穏な空気を感じていた。
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