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第八章 将来の話
「ねえ、ハルカさんは女の人として生きていきたいと
思ったことはあるの?」
ホストクラブからの帰り道、アキヒトは彼に尋ねた。
なゆかさんと会いに行った時に
もしかしたらこの人は女として生きたかったのかな?
と思ったからである。
だが「ううん。」
と否定された。
「僕は僕やからな。
確かにオンナに生まれていたら
ええと思ったことはあるよ。
せやけど、女やったから言うて、
好きな人と一緒になれるとはかぎらへん。」
千里さんの顔が浮かんで、
アキヒトの胸が苦しくなった。
彼の初恋の人は、自分そっくりなお姉さんと結婚したのだ。
何も言えず黙るアキヒトを、
ハルカさんが覗き込む。
「アキヒトは僕が女の子だったら良かった?」
彼の瞳が悲しみの色に染まる。
安易にごまかす事は出来ないと思いながら、アキヒトは口を開いた。
「分かりません。」
「・・・・・・そうか。」
何か言いたそうなハルカさんの瞳を、彼は見つめた。
「あの、俺がハルカさんに惚れてる事は本当の事ですからね。
そこは誤解しないで。」
ただ与えてもらってばかりの自分が、
どうやったら彼を幸せに出来るのか?
分からなくて迷っていただけなのだが。
ハルカさんの表情が曇ったのを見て、
アキヒトは気がかりだった。
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