企画課のおんな

6/6
前へ
/6ページ
次へ
滑稽だ。だってそうだ。たかが言葉一つのプロポーズを受けて、それでいてそのフィアンセの姿が父である折本サトルと重なって見える、そんな都合の良いことがあるのだろうか? これを滑稽と言わず、なんと言う。 園田香子は乱れた。仕事に私情を挟んではいけない、それはわかっている… でも私だって人間だ、人を妬む時は妬む。 園田香子は再びファイルから目を反らした。そしてファイルを自分のデスクの上に置いた。 ゆっくりと自分の両足を隣のデスクの上にドカッと置いた。自分のデスクの上でないのがミソと言える。自分のデスクが汚れるのは、まっぴらごめんだ。 それに隣のデスクは同僚の鴨志田結城太郎(かもしだゆうきたろう)だ。彼は園田香子より二年後輩だ。仕事も良く出来る、それでいて顔立ちは端正だ。 前述した通り、鴨志田は園田香子の後輩だ。そして園田香子は一人の女性だ。後輩である鴨志田のことを異性として気にかけても問題なんかない。 その気にかけが始まった矢先、鴨志田に恋人がいることを知った。 自分を傷つけまいとする防衛本能が園田香子の中で働くと、鴨志田に対し冷たい態度で接するようになった。これは全ての男女に普遍的なことだ。決して園田香子の性格が悪いことではない。
/6ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加