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「ハイ!エイジさん終わりましたよ。
人間大へと戻して下さい」
「デスレムさん!もう一匹!
もう一匹ツインテールは居ますよ」
「あっちはたぶん大丈夫ですよ」
そうデスレムさんが断言した時だ。
倒れ付しているツインテールを、グドンがおもむろに貪り食べ始めたのだ。
「グドン待て!お預け!お預け!!」
トキノンの言葉はもう完全に聞こえていない。目の前のツインテールに夢中だ。
ΣバキバキΣグシャボリむしゃむしゃクチャ…ニチャぁ
堅いカラごとエビを食べるかのように、咀嚼音がやたら大きくエグい…。
しかし、とても美味しそうに食べているのは、端から見ててもハッキリと分かる。
とてもとても良い笑顔なんだ。
美味しい!!その言葉は発せずとも伝わるね。
だが、トキノンは完全に目を瞑って見ないようにしている。
「ムリムリ…私…見れない…」
まあ、そうだよね…。
見ようによっては、ペットがゴキブリを食べてるようにしか見えないよね…。
そのグドンの食べ始めと同時だ。
もう一匹のツインテールの様子が明に変化しだした!!
「グワヮヮグァァァ~ン~」
大きな鳴き声をあげると…。
反り立っていた体を力一杯頭の側へと屈めて、なんと涙を流し始める。
ツインテールは体の姿勢は コ の字のようにして…。
お尻の模様部分を、これでもかと頭の上へと近づけ。
力み始めた。
「これって…まさか?」
「そう!産卵です。
ツインテールは産卵のトリガーとして…。
おそらく仲間のツインテールがグドンに食べられなければならないんでしょう。
先程倒したツインテール。
グドンに食べてほしくて突っかかっていましたよ。
要は繁殖の為の異種族共生関係ですね」
ウソではなさそうなので僕はデスレムさんを人間大へと戻す。
しばらくすると…。
1メートル大はあろうピーナッツ型の岩のような卵を、粘り気があり粘着質の液体と共に、自らの頭の上へと無数に産み落としてゆく。
その形と大きさと物質から、モコモコとツインテールの頭の上へ卵鞘(らんしょう)状に積み重なり。
まるで巨大なアフロヘアーかの如く、黒く大きく形成されてゆくのだった。
「スゴい!こんなの初めて見た…」
僕は感心しっきりさ。
ツインテールは全ての卵を体内から産み落としきったのだろう…。
コ の字状に曲げていた体を、ダラリと力なく地面へと投げ出し。
うつ伏せ寝をしているかのように、自らの生涯にその幕を降ろした。
「もしかしてご存知なかったのですか?
グドンまで用意して…」
「ご存知も何も初めて知ったよ。
デスレムさんはどうして知ってたの?」
「前に一度だけ、似たような状況に遭遇しましたから…。
ですが、あちらの方はしっかり撮影をされてますよ」
デスレムさんの指し示した方向を見ると…。
ムラマツ先生が一心不乱にツインテールの写真や動画を撮影している。
「…素晴らしい…なんと…いう…尊さ…」
ツインテールを写真に撮影しながら、尊みの涙をハラハラと流すムラマツ先生。
「あの…ムラマツ先生?
もしかして、この撮影をしたくて僕達を連れて来たんですか?」
「半信半疑…。
もしかしたらと期待して考えてはいたよ。
学会や研究論文でも、産卵条件は良く分からず議論は分かれていたしね。
なので、検証したくて君達に手伝ってもらった」
「そんな事の為に…。
そんな事の為に私のグドンを巻き込まないで下さい!!」
「そんな事?
君らは知るまい…。
食糧不足で全人類が困窮し、もはや怪獣を食べるしか無いとなった、あの絶望し追い詰められた状況を…。
そしてその時に食べたツインテールの美味しさを…。
君らは知るまい……」
怪獣が出現するようになって、この地球の食糧生産や食糧消費が大変な事になったんだ。
全人類食糧難…。
かなり酷い状況だったとテレビで見た事がある。
その時に食べれる怪獣が調べられ、ツインテールは食用に適していると判断された。
グドンへと食べさせる分まで、人類の食糧へと回され、ツインテールの繁殖の仕方が検証し辛くなったのだろう。
怪獣混乱期の話しを持ち出されると…。
僕らは反論し辛い。
「なら先生は、ツインテールを養殖したくて、この検証をされたんですか?」
「そんな事決まってるだろう!!
ツイッターとインスタでバズッて、ネットのツインテール倶楽部で自慢するのだよ!!!」
「「……………………」」
知の探求…。
本来であればもっと高尚な事なのだろうが…。
この日本という国。
そして日本人というちょっと変わった人類は、自らの仲間界隈で自慢したいというのが、第一行動原理として成立するようだ。
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