嫌いの向こう側

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「彼もなかなか頑張るねぇ」 「彼って?」  来客がひと段落し、棚に商品を並べていると、亜里沙(ありさ)がニヤニヤしながら話を切り出した。 「決まってるじゃん。美月のストーカー、二階堂(にかいどう)陽太(ひなた)」 「ちょっ……。別にストーカーって訳じゃ……」 「へぇ。庇うんだ」 「別に庇ってなんか……!」  ムキになって怒る美月を亜里沙がからかうように笑った。  朝倉美月は大学二年生。  亜里沙に誘われて始めたコンビニのバイトも、三か月もすれば板についてくる。  ストーカー疑惑のかかっている先程の青年、二階堂陽太は、美月と同い年の大学二年生。  一週間前初めて立ち寄ったこのコンビニで、美月に一目惚れしてしまったのだという。  会計を終えた直後、 「一目で恋に落ちました。付き合ってください!」  と、いきなり告白するものだから、美月が驚くのも無理はない。 「ご、ごめんなさい」  かなり引き気味に断られたのは言うまでもない。  しかし、そこで引き下がらないのが彼の凄いところだ。  あの日から一週間、陽太は店に通いつめているのだ。  来るたびに告白し、呆気なく散っていく陽太の姿は、今ではすっかりこの店の名物となっている。
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