嫌いの向こう側

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「それにしてもさぁ。いい加減、次の恋に踏み出してもいいんじゃない?」  雑誌を整理しながら、亜里沙が背中越しに声を掛けた。 「うん……」  コンテナボックスを片す手を止め、美月は曖昧に返事をした。  高校時代から付き合っていた彼氏を不慮の事故で亡くしたのは、昨年のことだ。  それからというもの、美月はまるで抜け殻のように自宅と大学を往復する日々を過ごしていた。  そんな美月を心配し、コンビニのバイトを勧めてくれたのは、高校時代からの親友、亜里沙だった。  ここは、亜里沙が高校生の時からバイトしている店で、丁度一人欠員が出たのを機に、店長に掛け合ってくれたのだ。  おかげで、少しずつではあるが、美月は以前の明るさを取り戻してきている。  だが、新しい恋となると話は別だ。  さすがにまだ、次へ踏み出す気にはなれない。  むしろ、この先の未来に、そんな日が訪れるのかどうかも疑問だ。
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