嫌いの向こう側

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「今日が声でしょ? 昨日が髪型。一昨日が……何だったっけ?」  指折り数えながら、亜里沙が首を傾げる。 「Tシャツ」 「そうそう! ピンクのTシャツが嫌いって言ってた」  亜里沙が手を叩いて笑った。 「だって、ピンクのTシャツ着てる男の人なんて、嫌だもん」  再び作業を始めた美月を、亜里沙が優しい眼差しで見つめる。 「でもさ。彼、美月が嫌いって言ったところ、律義に直してくるじゃん。ワックスバリバリだった髪も、今日はふんわりナチュラルヘアだったし、Tシャツも無地の白Tになったし、その前に言ってた鎖ジャラジャラのアクセも、あれからして来ないし……。美月に気に入られようと必死なんだよ。美月がシフト入ってない日なんて、涙浮かべて帰ってったんだから」  その日の陽太の落ち込みようを思い出し、亜里沙は小さく吹き出した。 「とりあえず連絡先だけでも交換したら……」 「嫌!」  亜里沙の提案を、美月はきっぱり却下した。 「今はまだ、考えたくない」  重ねたコンテナボックスを抱えると、美月はバックヤードへと姿を消した。
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