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翌日。
期待を裏切らずに現れた陽太の表情は、緊張で強張っていた。
「あ、朝倉さん!」
いつもよりキーの高い上ずった声に、「は、はい」美月は僅かに後ずさりながら返事をした。
「あなたと出会ってから、一週間が経ちました」
「はい……」
「そろそろ、ケジメをつけようと思います」
「はあ……」
店内にいる数人の客が、商品を選ぶふりをしながら聞き耳を立てている。
バックヤードから顔だけを覗かせ固唾を呑んで見守る亜里沙の姿が、視界の端に映った。
その中で、陽太の声が、ひときわ大きく響き渡った。
「駅前のファミレスで待っています。バイトが終わったら、来てください」
「え……あの……」
「朝倉さんが来るまで、待っています。だから……」
「行きません」
ぴしゃりと叩きつけられた美月の言葉を、陽太が笑顔で受け止める。
「来なかったら、それが答えだと受け止めます」
「え?」
「もう二度と、ここへは来ません」
「本当に……?」
「はい。だから、絶対来てください。ずっと、待ってますから」
陽太は購入した缶コーヒーを掴むと、出入口へと向かった。
「い……行きませんから!」
美月の言葉に振り向きもせず、陽太は颯爽と出て行った。
「絶対、行きませんからねー!」
美月の声が、ガラス貼りのドアに阻まれ、店内に跳ね返ってきた。
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